2014-09-30 川上 詩 川原の石の上に置かれた 小さなラジオ 自分の送ったリクエストメールが 読まれているのが聞こえて 婆さんは思わず 洗濯の手を止めた DJは軽快に 婆さんが細い指で綴った ささやかな愛の記憶を読み上げる 婆さんの顔はほころぶ 婆さんは目を閉じて ラジオに集中する その目の前を 大きな桃が流されていく 荻野目洋子の ダンシングヒーローが 桃と婆さんとを 遠ざけていく