2015-03-14 タロット 詩 山からおりてきた 大きなイノシシの牙が わき腹にぶっ刺さっている僕を見て 行きつけのスナックのママは 長い煙草をくゆらせながら <ほら、慌てないの> とタロットを切り始めた <いい女だなァ> と誰かが呟いて <ああ> と誰かがそれに応えて 僕は半笑いのまま血を吐いた 薄れていく意識の中で 僕はなぜか唐突に 死んだおじいちゃんのことを思い出した <学校に上がる前 野グソをしているところを 芥川龍之介に見られたことがあるんだ> というあの話 もう少し信じてあげればよかった スナックのママは ピスタチオを齧りながら まだタロットを並べている