春が来て
風が吹き
あたらしい人々がやってくる
花が咲き
空を隠し
あたらしい季節がやってくる
硝子を磨き
光を待っている
それはやがて
街角に
駅のホームに
陽に溶けながら
公園の涸れた噴水に
西日の強い私の部屋に
窓を開け
鼻をかむ
あたらしい季節がやってくる
父が来て
私を呼ぶ
あたらしい母に挨拶しなさい
と
居間を覗く
女が座っている
それはかつて
自宅に来た
市役所の人に
奇声を上げながら
熊手を振り回していた
近所のおばさん
長い春がはじまる